IBJが独占禁止法違反の疑い。一体何をしたのか。事の顛末を解説

2024年1月22日
公正取引委員会が「IBJが申請した確約計画を認定した」という報道がありました。

一見「どういうこと?」と思われた方もいたのではないでしょうか。

今回はIBJがどんなことをしたのか。

その経緯と現状について解説していきます。

  • 結婚相談所の入会を検討している人
  • 既に結婚相談所に入会している人

どちらにも関係のある話ですので、参考になれば幸いです。

結論:IBJの不正は正された。と公正取引委員会は判断した

目次

何が起きたのか?

何が起きたのか?

簡単に言うと、IBJは特定の結婚相談所(以後「相談所A」とします)に連盟を退会するよう“お願い”をし、従わなかった相談所には会員を紹介していなかった。というもの。

連盟とは

複数の結婚相談所と会員を共有している団体。
結婚相談所は加盟料を支払うことで連盟に所属でき、連盟の会員を紹介することができる

会員は結婚相談所に会費を払う事でサービスを受ける。結婚相談所は連盟に加盟料を払う事で会員を紹介してもらえる

相談所Aとは「複数の連盟に加入している結婚相談所」のことで、

  • IBJとTMS(全国結婚相談事業者連盟)
  • IBJとNNR(日本仲人連盟)
  • IBJとTMSとJMN(日本成婚ネット)
  • IBJとTMSとNNR

このような相談所に対して

「IBJ以外の連盟を退会しないとお見合い制限をかける」

と示唆し、退会しなかった相談所には、お見合い制限をかけていた。というもの。

「IBJ以外の連盟を退会しないとお見合い制限をかける」 と示唆し、退会しなかった相談所には、お見合い制限をかけていた

お見合い制限とは具体的には、

  • 相談所Aの会員がIBJ直営店の会員に申し込みをかけた時、管理者権限でお断りにしていた
  • 相談所Aの会員がお見合い相手を検索する時、IBJ直営店の会員が表示されないようにしていた
  • IBJの公式HPに相談所Aの情報を削除していた

このような事をしていました。

・相談所Aの会員がIBJ会員に申し込みをかけた時、管理者権限でお断りにしていた ・相談所Aの会員がお見合い相手を検索する時、直営店の会員が表示されないようにしていた ・IBJの公式HPに相談所Aの情報を削除していた

今では改善され、ちゃんと公式HPにも掲載されています

なぜそのような事をしていたのか

なぜそのような事をしていたのか
  • 悪く言うと、お金のため
  • 良く言うと、IBJ会員の質を落としたくなかったから

だと思われます。

IBJは入会条件を「年収500万円以上」「大卒」などとし、ハイスペックな会員が集まる連盟として評価が高いです。

具体的には

  • 有名な企業・団体が相次いで加盟している
  • 全国約8000ある相談所の内、半分が加盟している
  • 全国の婚姻者約50万件の内、0.7万件がIBJで結婚した人たち

このように結婚相談所のトップを担っている有名ブランドです。

結婚相談所と言えばIBJとオーネットと言われるくらい有名な所

それほど有名な企業ですから、ハイスペックな人との出会いを期待する人たちが集まるのですが…

IBJに入会したのに、別の低スペックな連盟会員を紹介されると

  • 「IBJに入会したのに低スぺばかり紹介される」
  • 「IBJとは名ばかり」

と悪い評判が立つことが予想されます。

IBJとしてはこのような事態を避けたいため、IBJだけを使ってほしかった。という願望があったのだと思います。

もちろん、単にライバルに負けたくなかった。という利益重視の考えもあるとは思いますが

詳しい経緯と何がダメだったのかを解説

詳しい経緯と何がダメだったのかを解説

経緯(最終的には示談が成立した)

時系列を説明すると

時期内容
2021年9月頃複数連盟に加盟している東海地区の事業者(相談所)に対して、TMSを退会するようにお願い。
退会しなかった事業者に対して、10月以降、IBJメンバーズ会員とのお見合い制限をかける。
2022年2月頃複数連盟に加盟している東日本地区の事業者(相談所)に対して、TMSを退会するようにお願い。
複数連盟に加盟している西日本地区の事業者(相談所)に対して、NNRを退会するようにお願い。
退会しなかった事業者に対して、5月以降、IBJメンバーズ会員とのお見合い制限をかける。
2022年9月頃複数連盟に加盟している事業者(相談所)に対して、TMS・NNR・JMN 等を退会するようにお願い。
退会しなかった事業者に対して10月以降、IBJ、ZWEI、サンマリエ会員とのお見合い制限をかける。
2022年11月頃複数連盟に加盟している事業者(相談所)に対して、TMS・NNR・JMN 等を退会するようにお願い。
退会しなかった事業者に対して12月以降、IBJ公式HPから情報を削除している。
2023年3月23日IBJに独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査 
2023年11月28日公正取引委員会はIBJに対し確約手続きに係る通知(「改善すれば大目に見るよ」という連絡)を行った
2024年1月22日公正取引委員会はIBJより確約計画の認定を求める申請(「改善するから大目に見て欲しい」という申し出)があった事を公表。
確実に改善されると判断したため、確約計画を認定した。(絶対改善すると思ったので、大目に見た)
情報引用元:公正取引委員会
時期内容
2021年9月頃複数連盟に加盟している東海地区の事業者に対して、TMSを退会するようにお願い。

退会しなかった事業者に対して、10月以降、IBJメンバーズ会員とのお見合い制限をかける。
2022年2月頃複数連盟に加盟している東日本地区の事業者に対して、TMSを退会するようにお願い。
複数連盟に加盟している西日本地区の事業者に対して、NNRを退会するようにお願い。

退会しなかった事業者に対して、5月以降、IBJメンバーズ会員とのお見合い制限をかける。
2022年9月頃複数連盟に加盟している事業者に対して、TMS・NNR・JMN 等を退会するようにお願い。

退会しなかった事業者に対して10月以降、IBJ、ZWEI、サンマリエ会員とのお見合い制限をかける。
2022年11月頃複数連盟に加盟している事業者に対して、TMS・NNR・JMN 等を退会するようにお願い。

退会しなかった事業者に対して12月以降、IBJ公式HPから情報を削除している。
2023年3月23日IBJに独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査 
2023年11月28日公正取引委員会はIBJに対し確約手続きに係る通知(「改善すれば大目に見るよ」という連絡)を行った
2024年1月22日公正取引委員会はIBJより確約計画の認定を求める申請(「改善するから大目に見て欲しい」という申し出)があった事を公表。
確実に改善されると判断したため、確約計画を認定した。(絶対改善すると思ったので、大目に見た)
情報引用元:公正取引委員会
  • TMS(全国結婚相談事業者連盟)
  • NNR(日本仲人連盟)
  • JMN(日本成婚ネット)

超ザックリ言うとIBJと公正取引委員会との間に「示談が成立した」ということです

社会的な理念とは逆の行動をとっていたことが一番の問題

ダメな理由は幾つか有りますが、一番の問題は無関係な会員が巻き込まれていたこと。

IBJ会員にも出会えることに期待して相談所のサービスを契約したのに、それが一部機能していなかった。となると、

「ご縁がある皆様」を幸せにする。

というIBJの経営理念と逆の行動をとっている事になります。

また、会員には何が起こったのか知らされず、何の説明も無くお断りされる…。

ビジネス的な目線で言えば凄く賢いやり方だと言えますが、関係の無い人を巻き込む戦略はフェアではありません。

圧力を受けていた事業者(相談所)も言うに言えなかったことでしょう

利用者側としては、連盟は1つにまとめてくれた方が会員数が多くなり、出会いのチャンスが広がっていい。

と思うのですが、困るのは事業者側。

これから結婚相談所を開業しようとしている人が、IBJしか使えない。となると

IBJのさじ加減で

  • 値段(加盟料)が不当に上げられる恐れがある
  • サービスが悪くても使い続けるしかない

といったことが起こり得ます。

実際、IBJのさじ加減でお見合い制限をかけられた事業者があったわけですからね…

また、HPから自社の情報を削除されると

  • IBJの公式HPから人がこなくなる
  • ドメインパワーが落ちる(Google検索で上位に表示されにくくなる)

となり、WEBの集客力が格段に落ちる可能性もあります。

今は元通りに復活しています

なぜ発覚したのか?

なぜ発覚したのか?

詳しくは不明ですが、実際に警告・被害を受けた事業者が内部告発をした可能性が高いです。

以下の記事には関係者同士のやり取りを示す文章が書かれていたことから、不正を良しとしない内部の人が、情報をリークした。

と考えるのが妥当です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240122/k10014330171000.html

大手企業の不正は大体、内部告発で発覚することが多いです

誰に責任があるのか。誰に影響があったのか

誰に責任があるのか。誰に影響があったのか

ここではわたしの主観を交えて「誰に責任があるのか」「どの程度影響があったのか」を考えうる限り説明します。

誰に影響があったのか

申し込みをかけた人

まず、複数連盟(IBJ含む)に加盟していた結婚相談所の利用者(会員)が最も影響を受けています。

最終的には IBJ、ZWEI、サンマリエ会員とのお見合い制限を受けているので

  • IBJメンバーズ会員:6372人
  • ZWEI会員:2万7758人
  • サンマリエ会員:不明

出典:オーネット

会員は男女いるので、それぞれ半分にすると

1年~2年の間、1万人程度のIBJ会員とお見合いが組めない状態になっていた。と思われます。

申し込まれるはずだった人

一般的に申し込みの受諾率は10%程度と言われることが多いです。

申し込まれた人が「この人はダメだ」と一蹴する可能性もあるので、申し込みをかけた人ほどではないですが、多少は影響を受けていたと思われます。

IBJの結婚相談所ユーザーなんだけど、一回、女性側からお見合い申し込みがあったにもかかわらず、俺にお見合いをするか否かの判断を委ねず、勝手に断られていたことがあった。
マッチングアプリでその女性と知り合って、「IBJのシステムで貴方に申し込みをしたことがある」と言われて発覚した。当然説明を求めたが、「こちらのミスですが、なぜそんなことが起こったか、以後の是正策はお教えできない」と言われた。
(5ちゃんねる 一部抜粋)

5ちゃんねるではこのような書き込みがあったことから、事実を物語っています。

複数連盟に加盟していた事業者

実際に“お願い”をされた事業者も

  • 連盟を退会させられた
  • お見合い制限を受けた

これらにより不審に思った会員から信用を失ったことでしょう。

直接クレームを受けたかもしれませんし、口コミで不当な評価をされたかもしれません。

IBJ(日本結婚相談所連盟)

当事者も当然影響を受けています。

分かりやすい所で言えばブランドイメージの低下。株価の下落。

今は改善したとはいえ、無かった事にはできません。

今後の動きに注目です

誰に責任があるのか

IBJ(9割くらい)

まず大前提として、IBJに責任があるのは明白です。(今では改善されています)

実際に報道されていて、公正取引委員会も

独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項(拘束条件付取引))の規定に違反する疑いが認められた。

とハッキリ明言しています。(参考:公正取引委員会

複数連盟に加盟していた事業者(1割くらい)

IBJは会員数が8万6450人(2024年1月現在)ですが、地方になると会員数は一桁。なんて事も良くあります。

(参考記事:【男性向け】田舎で結婚相談所はあり?出会える人数を市町村別に出してみた

そんな時には会員数を増やすしかありませんが、手っ取り早く会員を増やす方法が他の連盟にも加入すること。

「会員に出会いの機会を提供したい」という想いから複数連盟に加盟する事業者もいて当然でしょう。

ですが中には、サービス内容で差を付けれないため、会員数で勝負しようとした相談所もあるのではないかと思います。

IBJから制限を受けたにもかかわらず何もせず、会員の多さをアピールし続けていたのなら、詐欺と言われても仕方のないことです。

事業者が複数連盟に加盟しなければ会員は被害を被る事はなかったので、そのような観点で見れば、事業者も完全に被害者とは言えません。

難しい問題ではありますが、利用者に迷惑をかけないようにするにはどうすれば良いか。それを考えるのも事業者の役目です

相談所に入会した本人(1%くらい)

これを言うと当事者に怒られそうですが…影響のあった相談所に入会しようと決めたのは自分自身。

IBJに入会しなければ巻き込まれることはなかったので、そういった意味では本人に「全く責任が無い」とは言えません。

責任がある=悪い ということではありません

自分で選んだ行動は全て自分に責任がある。

これくらいの自責思考を身につけることができれば、相当な人格者になれます。

自責思考とは

何かトラブルがあったときに、他人ではなく自分に責任があると考える事。
過度な自責思考はうつの原因になる可能性がある

IBJはどのような改善をしたのか

IBJはどのような改善をしたのか

大きく分けると次の6つです。

  1. 違反被疑行為を取りやめる事 
  2. 1、4を取締役会において決議する事 
  3. 1、2について通知・周知する事
  4. 同様の行為を行わない事
  5. コンプライアンス体制の整備を実施する事
  6. 1~5の履行状況を報告する事(3年間)

公正取引委員会はこれらが確実に実施されると判断して、これ以上の処罰を免除しました。

被害に遭わないための方法

被害に遭わないための方法

もうすでに改善はされており、公正取引委員会も確約手続き(措置を免除する)計画を受理していますが、心配な場合

  • 連盟に加入していない結婚相談所を利用する
  • IBJ以外の結婚相談所を利用する
  • IBJだけに加盟している結婚相談所を利用する

このような対策が考えられます。

ただし、他の連盟も同じことをしている可能性は十分あり得ますし、システムを組んでいる限り

  • システムの不具合がある
  • 管理者権限でお断りされることがある

このような可能性は0ではありません。

著者の意見・見解

著者の意見・見解

「今回の不正はどの相談所で起こっても不思議ではないけど、信じるしかない」

というのが率直な感想。

これは「外に出歩く限り、車にひかれるリスクはある」ようなもので、どんなサービスにも、不備がある可能性は一定数あります。

例えば

  • 食品の中に大腸菌が検出される
  • 一部の機能に欠陥が発見され、商品をリコール(回収)する
  • 試験の結果を何十年に渡り不正していた車業界

等々。

人が生きるうえでリスクは必ずあります

そのため、我々にできることは

  • 信用する、受け入れる
  • 知識を付けてリスクをなるべく抑える
  • 利用しない

基本的にはこの3つしかありません。

このようなことを聞くと「結婚相談所は信用できない」と思われるかもしれませんが、

マッチングアプリに比べると、詐欺に遭うリスクは圧倒的に低いため、

結婚相談所を辞める程ではないと思っています。

公的機関によるお墨付きを得られたわけですしね

現在IBJは、結婚相談所だけでなく、

  • マッチングアプリ
  • 婚活パーティー
  • 街コンアプリ

と様々なプラットフォームを展開しています。

恐らく、婚活事業でトップになるのも時間の問題と思っています

未来を担う企業として、是非模範となるような動きをしてほしいと願います。

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